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気づけばこんなに?——ポリファーマシーとお薬の見直し

  • 執筆者の写真: 矢嶋壮眞
    矢嶋壮眞
  • 11 分前
  • 読了時間: 7分

「内科、整形外科、眼科……気づけば飲んでいるお薬が10種類近くになっていた」。高齢の患者様から、こうしたお話をうかがうことは少なくありません。複数の医療機関にかかるうちに、お薬の数が知らず知らずのうちに増え、副作用等の有害事象が起きてしまった——今回は、こうした「ポリファーマシー」について、セルフチェックも交えてご紹介します。


ある80代女性、Aさんの場合

Aさんは、高血圧で内科に、膝の痛みで整形外科に、目のかすみで眼科に、それぞれ定期的に通院されていました。それぞれの診療科では適切な処方がされていましたが、ある時ご家族が「お薬の袋が、いつのまにかレジ袋いっぱいになっている」ことに気づき、薬局に相談されました。

確認してみると、同じような作用を持つ薬が重複していたほか、眠気やふらつきにつながる可能性のある薬が含まれており、最近増えていた「ふらつき」の一因になっている可能性がありました。医師と薬剤師が連携して整理した結果、薬の種類を減らしながらも、必要な治療は継続することができました。

※Aさんは、説明のためにポリファーマシーの典型的な状況を示した架空の例であり、実在の患者様の事例ではありません。


ポリファーマシーとは

ポリファーマシーとは、単に「薬の数が多い」ことを指す言葉ではありません。多剤併用によって、薬物有害事象のリスクが高まったり、飲み間違いや服薬管理の難しさなどの問題につながったりしている状態を指します。

薬の数には一律の基準があるわけではなく、薬の種類や患者様の状態、治療内容などによっても異なります。大切なのは、薬の数だけを見るのではなく、「その薬が今の自分に本当に必要なのか」「薬による負担や問題が生じていないか」という視点で定期的に見直すことです。


なぜ薬は増えていくのか

●複数の診療科・医療機関を受診し、それぞれで処方を受けている

●新しい症状が出るたびに薬が追加され、見直すタイミングがないまま積み重なる

●薬の副作用による症状に対して、さらに別の薬で対処してしまうことがある

お一人おひとりは適切な診療を受けていても、複数の医療機関の情報が十分に共有されていないと、結果として薬が重なってしまうことがあります。

たとえば、複数の医療機関から、同じ成分や同じような作用を持つ薬が重複して処方されていた、というケースもあります。


処方カスケードという連鎖

たとえば、血圧を下げる薬の影響でめまいやふらつきが出た際、それを「新しい症状」と捉えて、ふらつきに対する薬がさらに追加される——このように、薬の副作用に対して新たな薬で対応してしまうことを「処方カスケード」と呼びます。

複数の医療機関にかかっていると、それぞれの医師が「前の薬の影響かもしれない」と気づきにくく、この連鎖が起こることがあります。

「カスケード(cascade)」とは、階段状に連なった小さな滝が次々と水を流し落としていく様子を指す言葉です。1つの薬の副作用が次の薬の処方につながり、それがさらに次の処方を生む——その連鎖を、滝の連なりになぞらえて「処方カスケード」と呼びます。


とくに注意したい薬の組み合わせ

●複数の医療機関から、同じ成分や似た働きの薬が処方されているケース

●眠気やふらつきを起こしやすい睡眠薬・抗不安薬などが重複しているケース

●長期間服用している薬について、症状や治療目的に照らして継続の必要性を見直す必要があるケース

●複数の医療機関から血圧を下げる薬が処方され、血圧が下がりすぎているなどの問題がないか確認が必要なケース

これらは、薬そのものが「悪い」わけではありません。必要な薬であっても、複数を同時に服用することで、薬同士の作用が重なったり、副作用のリスクが高まったりする場合があります。そのため、定期的に薬の内容を確認することが大切です。


セルフチェック:こんな症状に心当たりはありませんか?

●以前よりふらつきやすい、転びやすくなった

●物忘れが増えたように感じる

●食欲がない、なんとなく元気が出ない

●眠気やだるさが続いている

●薬の飲み忘れ・飲み間違いが増えた

これらは加齢そのものによる変化と見分けがつきにくいものですが、薬の作用や相互作用が影響している可能性もあります。

心当たりがある場合は、自己判断で薬を中止するのではなく、一度お薬の内容をかかりつけの薬局などにご相談してみることをおすすめします。


ポリファーマシーが引き起こすリスク

薬の数が増えるほど、薬物有害事象が起こるリスクも高くなることが知られています。特に、多くの薬を服用している高齢者では、薬物有害事象の発生増加との関連が報告されています。

転倒による骨折、認知機能への影響、腎臓や肝臓への負担など、加齢による変化と区別がつきにくい形で現れることが、この問題の見つけにくさにつながっています。

また、薬の種類が多いほど飲み間違いや飲み忘れも起きやすくなり、それがさらに体調不良を招くという悪循環に陥ることもあります。管理する薬が多いことは、ご本人だけでなく、日々の服薬をサポートするご家族や介護者の負担にもつながります。


「減らす」は自己判断で行わない

ポリファーマシーへの対策は、あくまで医師・薬剤師と相談しながら進めるものです。

「なんだか調子が悪いような気がする……」と自己判断で薬の量を減らしたり中止したりすると、症状の悪化や急な体調変化につながる場合があります。

大切なのは、お薬手帳や薬局を通じて、服用中の薬を一元的に把握してもらうことです。薬の数を減らすこと自体を目的にするのではなく、必要な治療を続けながら、薬による負担や問題を減らしていくことが重要です。


フジ薬局でできること

●複数の医療機関からの処方をまとめて管理し、重複や相互作用をチェック

●気になる点があれば、処方医への問い合わせを実施

●一包化やお薬カレンダーで、飲み間違いを防ぐ工夫をご提案

●在宅訪問時に、体調の変化とあわせて服薬状況を継続的に確認

Aさんのケースのように、複数の医療機関を受診している場合でも、お薬手帳を1冊にまとめて特定の薬局を「かかりつけ」として決めておくことで、薬の全体像を把握しやすくなります。

フジ薬局では、服用中のお薬をすべて確認し、気になる重複や飲み合わせがあれば、ご本人・ご家族の同意を得たうえで、処方医に確認のご連絡をしています。


「ブラウンバッグ運動」という考え方

アメリカで始まった「ブラウンバッグ運動」という取り組みをご存知でしょうか。

処方薬だけでなく、市販薬やサプリメントなども含めて、自宅にあるお薬を1つの袋にまとめて薬局や診察に持参し、薬剤師や医師にまとめて確認してもらう、という活動です。

名前の由来は、茶色の紙袋(ブラウンバッグ)に薬を入れて持ち込んでいたことからきています。1980年代にアメリカで始まった取り組みとして知られており、日本でも「ブラウンバッグ運動」や「節薬バッグ」など、残薬を含めた服薬状況を薬局で確認する取り組みが行われています。

この取り組みのポイントは、ふだんバラバラに管理している薬をまとめて「見える化」することにあります。

飲み忘れて残っている薬(残薬)、いつ処方されたかわからない薬、市販の風邪薬やサプリメント、健康食品なども一度まとめて確認することで、薬の重複や、現在は必要性が低くなっている薬などに気づきやすくなります。


ご自宅で今日からできること

●使い切れずに残っているお薬をひとまとめにしておく

●市販薬・サプリメント・健康食品も一緒に集めておく

●次回の来局時に、まとめて薬剤師に見てもらう

●お薬手帳を薬局に持参する

フジ薬局でも、来局時や在宅訪問の際に、服用中のお薬をまとめて確認するご相談を承っています。

ご自宅に眠っているお薬に心当たりがあれば、次回の機会にぜひお持ちください。


お薬の数が多くて不安に感じたら

「これだけ薬があって大丈夫なのか」と感じたときは、遠慮なく薬局にご相談ください。

お薬手帳を1冊にまとめていただくだけでも、重複や飲み合わせの確認がしやすくなります。

とくに、複数の医療機関にかかっている方や、施設への入居を検討されている方は、この機会にお薬の内容を整理しておくと、今後の生活の見通しも立てやすくなります。

フジ薬局では、在宅訪問の際にもお薬の整理をお手伝いしていますので、気になることがあれば、どうぞお気軽にお声がけください。


 
 
 

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